【アーティストインタビュー】
グラフィックデザイナー kan kobayashi

イエローコーナー日比谷店では、9月30日(土)まで企画展『GOOD SHAPE GOOD SOUND GOOD SPACE』を開催しています。本企画展では、若手の気鋭グラフィックデザイナーkan kobayashiさんによる最新の描き下ろし限定作品が展示販売されています。
今回の企画展に対する思いと新たな取り組みについてご本人にお話を伺いました。

店舗
–––––––––– まずは今回のテーマに込められた意味について教えてください。

文字通り「良い形」「良い音」「良い空間」という意味ですが、今回はBang & OlufsenとYellowKornerとのコラボということで、それぞれのブランドが目指している良い音、良いアートのある暮らしというものを、私のグラフィックでどう表現できるのかと考えた時に、それぞれが目指しているのはどちらも良い「空間」なんだろうなということで、この名前をつけました。それとGOODが3つ並んだ字面がキャッチーで良いかなと思ったのも決め手ですね。


–––––––––– 日比谷ミッドタウンでの開催ということで、作品作りで意識された点はありますか?

日比谷という場所を考えた時に、普段私の作品を見てくれている人たちよりも、お客さんたちの年齢層がやや高い方が多いかなと感じたので、作品としても少し落ち着いた世界観というか、私の好きな鮮やかな色調でありながら、ポップさを抑えた雰囲気が出せたら良いなと思いました。


–––––––––– 自転車がお好きだと伺っていますが、ご自身の作品との関連性はありますか?

自転車は好きでよく作品のモチーフにしています。色々な乗り物がありますが、自転車は歯車と歯車がチェーンで繋がっていて、それを回せば車輪が回る、というような、ものすごくシンプルな構造ですよね。六角レンチを持っていればほとんどの部分はいじれる、みたいなわかりやすさもある。モノとモノの関係性というか、構造そのものに興味が湧いて、理解したくなる感覚が自分のモノづくりにすごく影響を与えていると感じています。

自転車
–––––––––– 今回の企画展でも実物の自転車がディスプレイに使われていますね。

そうですね。この自転車に乗って過ごした時間や、見た景色などもインスピレーションとなっているので、作品と一緒に展示しています。サンフランシスコのMASHという人たちが作っている自転車です。普段使いから自転車旅まで、タフで幅広く使用できて、一番乗っている自転車ですね。

スピーカー
スピーカー
–––––––––– ここからは、それぞれの作品について解説をお願いできますか?



good shape good sound good space

最初に着手した作品です。私は展示作品を考えていく時に、主人公的な絵を一つ決めて、そのあとに脇役的な絵を増やしていくという方法で進めていくのですが、まさに今回の主人公というかメインのビジュアルになっている作品です。今回伝えたかったコンセプトを全て内包していて、Bang & Olufsenの機材も複数登場しています。他の作品と比べてもかなり濃い内容で、絵の密度を高めています。


alone

こちらはアルミ板に直接印刷を施した作品です。普段私はベタ塗りと細い線という、比較的アナログ表現でも再現可能な方法で描くことが多いのですが、今回はFLATLABOの最先端のデジタルプリントを使えるということで、アナログ表現ではあまりやらないことを試したいと思って描いた作品です。草原の表現などあえてデジタルブラシの粗さを残しています。黒々とした背景にアルミの素材感を残して草を描くところからスタートして、キャンプらしいモチーフを加えていき、少しずつストーリーを構築していった、という感じです。


silence

affection

off

curiosity

 今回の展示全体では支持体の色と黒以外に3色使っているのですが、それぞれの色を象徴するような比較的シンプルなグラフィックを作りたくて描いた作品です。川の青色では静かに休んでいる感じを、オレンジ色ではモノに囲まれた暖かい部屋の雰囲気を、緑色は雨で退屈な気持ちと音楽を楽しむ気持ちが入り混じるような感覚を。そして本棚の作品は、これら3色全てを使って、ごちゃっとたくさんのモチーフを詰め込んでみました。どの絵も自分自身を直接描いているわけではないのですが、これまでの体験を元に、感覚や気配、時間の流れのようなものを表現するようにしています。



shapes

今回の作品群の中では最後に描いた作品です。他の作品では情景を描いたのに対して、ここではちょっと形遊びをしてみようと思いました。個人的には一番お気に入りの作品です。他の絵に登場する人物たちを3人ピックアップして、代表的な図形である丸、三角、四角を表現しました。私は人の絵を描く時に、動きの生々しさみたいなものはもちろん大事にするのですが、それと同じくらい、仕草や姿勢によってできる図形的な遊び心のようなものををすごく重要視しています。図形の情報に目が行って欲しいので、この作品もあえて黒一色で描いています。


–––––––––– 作品を作る上で大事にしていることや意識していることはありますか?

フォルムや構図については人一倍気を遣っているつもりですが、それ以外に、実体験をなるべく大事にしたいと思っています。今はネットで何でも調べることができる時代ですが、そんな時代にあえて現地に行って見る、写真ではなくて実物を見て、触って、感じて、記憶して、その上で表現することを意識しています。


–––––––––– 作品作りを通じて嬉しいと思う瞬間はどんな時ですか?

1つめは、気に入った色や構図がバチッと決まった瞬間ですかね。デジタルでの制作は色も無限に変えられるし、ポーズも無限にいじれてしまうのでアナログでの制作よりも迷いが多く生じます。アナログの制作は、やりすぎると絵そのものが濁ってしまったり、紙が傷んでしまったりするので、やめどきを意識するというか、独特の緊張感があります。とはいえ、せっかくデジタルなんだから妥協せず行けるところまで行きたい。そんな葛藤がある中で、バチっと思い描いていた理想のバランスにはまった瞬間が一番嬉しいです。
2つめは、作った作品を人に見てもらえる状態にした瞬間。SNSだったら投稿ボタンを押した時とか、展示/販売であればお店がオープンした時とか。自分だけの責任ではなくなるタイミングともいえるので緊張や怖さもあるのですが、表現ができる場に身を置けていることの嬉しさと幸せさをすごく感じます。
そして3つめは、描くことで人との繋がりが一歩深くなる瞬間。ただ書いて終わりではではなくて、描いた絵で誰かが喜んでくれたり、新しい出会いがあったり、何か別のアクションに繋がった瞬間が嬉しいですね。


–––––––––– 今後チャレンジしてみたいことは何ですか?

今回の企画展で大きなサイズのウォールデザインを体験できたのですが、単純にもっと大きなサイズにチャレンジしたいですね。それと、デジタルプリントに関しても素材感や手触り感を色々と試してみたいです。木であれば木目を活かした表現や、金属であれば錆なども面白い作品表現に繋がると思います。

店舗
–––––––––– 最後に作品を気に入ってくれたお客様へ一言メッセージをお願いします。

まずは作品に少しでも興味を持っていただいて、本当にありがとうございます。元々私のことを知ってくれている方が今回の企画展で気に入った作品を見つけてくださることも嬉しいですが、全く私のことを知らない人が、「なんかこの絵イイね」って言ってくれることは、様々な情報抜きで単純にいい作品が作れているという自信に繋がります。
初めて見た人にもしっかり刺さるというか、しっかりと心を掴む作品作りをして、イイねと言ってくれる人をもっと増やしていきたいです。そういう意味では、より私のことを知っている人の少ない、海外での展示が次の大きな目標としてありますね。


写真:amanaphotography 瀬沼苑子
聞き手:YELLOWKORNER 高橋美織



kan kobayashi/小林寛

グラフィックデザイナー、イラストレーター
1998年東京都生まれ。2021年東京藝術大学デザイン科卒業
人の仕草や佇まい、気配をテーマとしたイラストレーションを中心に、様々な媒体にデザイン、アートワークを提供する。暮らしの中で誠実に役割を果たし、100年経っても色褪せない、自転車のように美しい道具として機能するグラフィックデザインを目指し、日々制作している。

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